死亡数、コロナ禍余波で急増 震災の11年上回るペース

2021年の9月までの死亡数が前年同期より約6万人増え東日本大震災があり戦後最多の増加となった11年を上回っていることが分かった新型コロナウイルスだけでなく、心疾患や自殺などによる死亡も前年より急増。コロナ禍の余波で平年を大きく上回る超過死亡」が生じている。

厚生労働省の人口動態調査によると、今年9月までの死亡数は約107万5千人で、前年同期より5万9810人増えた。11年3月の東日本大震災では約1万6千人が死亡し、同年9月までの死亡数は前年同期より4万9680人多かった。年間でも前年から約5万6千人増え、戦後最多の増加数だった。21年は9月時点で上回っている。

新型コロナの世界的流行(パンデミック)が始まった20年は9月までの死亡数が前年同期より約1万8千人減った。肺炎やインフルエンザなど呼吸器系の疾患が感染対策で大幅に減ったためだ。年間では約9千人減で11年ぶりに減少した。

なぜ21年は死亡数が大幅に増加しているのか。コロナとともに、それ以外を原因とする死亡が増えたことも大きい。

人口動態調査で今年7月までの死因別の死亡数でみると、全体で前年同期より約4万5千人増加したうちコロナが約1万2千人を占めた。このほか老衰が約1万1千人増えたほか、心不全など心疾患が約7千人、脳卒中が千人あまりなど循環器系疾患が約9千人増加していた。

高齢化で老衰は前年も増加していたが、循環器系疾患は前年同期の約8千人減から大幅な増加に転じた。平年を上回ったのは4月以降。緊急事態宣言の長期化により、運動不足などで健康状態が悪化したほか、受診控えなどが広がった可能性がある。一方で肺炎が約5千人減るなど、前年に続き感染対策の徹底が影響している。

自殺者も増えている。人口動態調査によると7月までに約1万2千人に上り、前年より約1400人増加。自殺者数は20年後半から大幅に増え、同年は11年ぶりに増加に転じた。21年も平年を上回る傾向が続いている女性の自殺が目立ち、飲食・サービス業など女性が多い非正規労働者の雇用環境の悪化が影響したとみられる。

国立感染症研究所は8月までの超過死亡を算出。17年以降の死亡数と比べて全国で4万3千~8千人の超過死亡が生じているとした。都道府県別では最大で東京が約4100人、大阪が約3600人、神奈川が約2800人、北海道が約2700人。コロナ感染が拡大した都道府県で多い。

調査結果をまとめた感染研の鈴木基・感染症疫学センター長は「新型コロナの流行が一因で、特に多いところは医療の逼迫が影響した可能性が考えられる」と指摘する。

今後、国内全体の死亡数はさらに増加する可能性がある。

国立がん研究センターによると、20年にがんと診断された登録数が前年より約6万件減少。減少は統計開始の07年以降で初めてで、自覚症状がない初期段階の患者が大幅に減った。コロナ禍で検診や受診が減った影響とみられ、今後、進行した状態で見つかると死亡数が増える恐れがある。

日経新聞電子版2021年12月10日より引用

東日本大震災の津波による被害を映像で見たとき、その迫力に驚き自然災害の恐ろしさを当時実感したことを記憶していますが、それを超える死者数が今回の新型コロナウイルスの影響で出ていることに自然災害以外にも世の中を恐怖に陥れる出来事があるということが分かり本当に驚いています。

新型コロナウイルスに関わる死亡者数増加要因は、感染症そのものの影響もありますが、それに付随して起きている雇用の問題、医療機関への受診減などの問題が大きいことを実感しました。

特に雇用の問題は重大で、医療現場では人員不足、飲食サービス業では人員過剰の状態が続いている現状を考えると日本における雇用の流動性の低さが課題であることも明るみに出たのではないかと思います。

雇用の問題は単純ではなく、飲食サービス業の労働者を医療現場で働くためにはスキルの習得などの問題はありますが、雇用の流動性が活性化して、こうした危機に素早く対応できるように適材適所に人員を配置できるような制度作りを考えていく必要があるのではないかと思います。