外国人高度人材の採用 企業側に語学の壁

大卒程度の学歴で専門的な技術や知識を持つ外国人の採用に当たり、高い日本語での会話力を求める企業の姿勢が就労の壁になっている求人の7割超が最高水準の日本語力を要求するのに対し、レベルを満たす求職者は4割弱にとどまることが26日、民間データの集計で分かった。国は「高度外国人材」として海外から研究者やエンジニアらの呼び込みを図るが、日本語での意思疎通を前提にした採用方針が活躍の機会を失わせている現状が浮かんだ。

米欧では会話力よりも専門性を重視した人材活用が定着している。IT(情報技術)分野などで人手不足が深刻になるなか、企業には成長の担い手を国外からも確保する姿勢が求められる。

外国人ら向け就職サイトを運営するヒューマングローバルタレント(東京・新宿)とグローバルパワー(同・台東)の求人・求職者データを日本経済新聞が集計した。

企業が専門性のある外国人に求める日本語力をみると、11月下旬時点の求人約1万8千件のうち75%は、国際交流基金などによる日本語能力試験で「幅広い場面で使われる日本語を理解できる」とされる「N1」以上の水準を必要としていた。一方、求職登録した約9千人のうち同水準は37%にとどまった。

グローバルパワーの竹内幸一社長は「日本語力を重視する企業が優秀な外国人材を逃す例は多い」と話す。台湾からの元留学生(25)はプログラミング言語などを習得したが、日本語はN1に届かなかった。希望した約10社の内定を得られず、今秋に台湾企業に就職を決めた。

経済産業省は、IT人材が2030年に最大79万人不足すると推計。パーソル総合研究所の小林祐児上席主任研究員は「IT分野こそ海外人材の活用が不可欠だ」という。しかし、日本学生支援機構の19年度調査で、日本で就職したのは留学生の36.9%と、国が目指す5割に届いていない。

明光ネットワークジャパンがアンケートで、外国人採用に消極的とした人事担当者らに理由を複数回答で尋ねると「言語・意思疎通が不安」が48%で最多となった。

日本は職務内容を限定しない「メンバーシップ型」雇用が中心で、必要なスキルの不明確さが日本語力を過度に重視する一因になっている。

一部では専門性を重視した採用の動きも。ITベンチャー、SUN(東京・港)は「日常的な日本語をある程度理解できる」というN3程度の外国人に照準を合わせる

九門大士・亜細亜大教授(国際人材開発)は「人手不足解消やダイバーシティー(多様性)実現には、個々のスキルや知見に目を向ける姿勢が重要だ」と強調している。

日経新聞電子版2021年12月27日より引用

外国人の高度人材の採用企業に日本語の語学力を重視するあまり、優秀な外国人人材の日本への就業機会が奪われてしまっているようです。

米欧では語学力よりも専門性を重視した採用活動が行われているようですので、優秀な外国人が日本での就職を選択せずに外国企業にに流れてしまう可能性があることが危惧されます。

特に外国人にとって日本語を理解することは難しいかと思われますので、語学力が高くないことを理由に採用の障壁を高くしてしまうと英語圏の国へ人材が流れてしまうことは容易に想像ができます。

日本企業は、外国人材採用のメリットとデメリットを今一度整理して外国人材の採用の要件を見直す時期に来ているのかもしれないと思います。