1人で4人介護可能に 政府、生産性向上へ規制緩和検討

政府は介護の人員規制の緩和を検討する。介護施設の入所者3人につき、少なくとも1人の職員を配置する現行の基準を見直し、1人で4人に対応できるようにする案を軸に調整する。センサーなどのIT(情報技術)活用で介護現場の生産性を高める。財政を圧迫する社会保障費の膨張を抑えつつ、介護・医療分野の人材不足を緩和するには思い切った規制改革が必要となっている。

介護や医療の現場ではセンサーで患者らの状況を確認したり、ロボットで作業負荷を抑えたりする技術開発が進んでいる。現行の配置基準があるため、ITで効率化が可能でも投資するインセンティブが弱かった

20日の規制改革推進会議で内閣府が改革を提起し、2022年初めから厚生労働省などと本格的な検討に着手する。介護は少子高齢化で需要が高まる一方、担い手の不足が指摘される。厚労省の将来推計では介護人材は23年度に22万人、40年度には69万人が足りなくなる。政府は早急に対応する必要があると判断した。

政府はまず有料老人ホームを対象に規制緩和検討する。現場で働く人の負担が増したり、「手抜き介護」が増えて介護の質が落ちたりしないよう制度設計する。

緩和の条件として、業務の効率化と質の維持を両立させる計画を介護事業者が政府に示す案がある。外部機関による監査で安全性などを確保することも求める。

在宅介護の難しい人が暮らす特別養護老人ホーム(特養)については、個室と共有スペースを組み合わせた「ユニット型」と呼ぶ施設での収容基準の見直しを検討する。これまでは1つのユニットあたり10人程度としていたが、より多くの人数を収容できる案を議論する

介護は仕事の負担と給与の見合いなどから現在も人材が集まりにくい。岸田文雄首相は予算措置による介護士や看護師の処遇改善を掲げている。それだけではなく、規制緩和を通じて生産性を高めることで、現場の業務の負担軽減や賃金増などにつなげる狙いがある。

医療・介護分野には利便性や生産性の向上の壁になっている規制が多い。介護施設だけでなく、医療機関でも入院患者に対する看護師の人数が定められている。

新型コロナウイルス対策では、抗原検査キットの個人向け販売が薬局に限られ、インターネット販売は医療界などの反対で解禁されていない。オンラインでの診療や服薬指導にも煩雑な要件などがあり、実際の利用が十分に進んでいない。

機械やITに委ねられる部分は任せて本当に必要な仕事に人手をかけるなど、労働力人口が減る中での対応が求められている。少子高齢化で社会保障費は国費ベースで21年度に40兆円弱に膨らんでいる。古い規制を見直して生産性を向上することで、費用の膨張を抑える重要性は高まっている。

日経新聞電子版2021年12月21日より引用

介護、医療現場の労働者の処遇改善に加えて、業務の効率化ができるように政府は規制緩和を検討しているようです。規制緩和が行われ、業務の効率化をするインセンティブが生じることは好ましいことだと思います。今後は、働き手不足を補うために外国人労働者を雇用していく必要が生じますが、そちらの規制緩和も早急に進むことを期待します。アフターコロナを見越して議論する必要があるのではないかと思います。