厚生労働省は7月16日、令和3年版労働経済の分析(労働経済白書)を公表した。
72回目となる白書では、新型コロナが雇用・労働に及ぼした影響を分析した。それによると、感染拡大により「宿泊業、飲食サービス業」など、対人サービスの産業を中心に雇用が減少したものの、雇用調整助成金の特例措置等の効果により、令和2年4月~10月期の完全失業率が2.6%ポイント程度抑制されたと見込まれることがわかった。
推計は、雇用調整助成金等の支給がなかった場合にその対象者すべてが完全失業者になると想定したもので、実際の令和2年4月~10月期の完全失業率は2.9%だった。令和2年4月には休業者数が前月から420万人増と急増したものの、雇用者数の減少は前月から約100万人減にとどめ、その後緩やかに回復傾向で推移している。休業者数は5月以降減少し、令和2年8月には前年同月比で14万人増まで減少。その後は横ばいが続いている。なお、完全失業率は緩やかに上昇傾向となり、令和2年10月に3.1%まで上がったが、リーマンショック期(最大5.5%)より低い水準にとどまっている。
他方、労働時間への影響を見ると、雇用者の総労働量を示す労働投入量が令和2年5月に前年同月比9.5%減と大幅に減少。リーマンショック期(最大5.7%減)の減少幅を上回った。一方で、賃金への影響を見ると、労働者の現金給与総額が令和2年4月以降大きく減少し、12月には前年同月比3.0%減と最大の減少幅を記録。だが、リーマンショック期(最大7.2%減)より小幅な減少にとどまった。こうした状況に白書は、企業の雇用維持の取り組みや、雇用調整助成金等をはじめとする政策による下支え効果があったものと分析している。